久慈のおいしい味・人・こと

ゆとりある記

旅先で女性一人で飲み屋さんに入ったとき、ほっとできて、お店の人もお客さんもいい人で、なおかつ地元のものが本当においしい。となるとそれだけで、「このまちいいな」と思います。

さらに、まちをブラついてなるほどと思ったり、笑ったり、そんな時間があるとなおさらです。

岩手県久慈市、先日うかがって、ここは“あまちゃん”だけでない、魅力多いところと実感しました。
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久慈への交通は、震災前の状態に復旧はしていません。この日は東京から二戸へ新幹線で、そのあと高速バスで久慈まで。駅前に降りると、JRの駅の横に、かわいい三陸鉄道駅がありました。張り紙に「列車が入るのはおおむね10分前です。改札はありません」など、ゆる~~~い親切な言葉が並んでいます。


駅前の道を「道の駅」にむかってぶらぶら歩きます。久慈高校美術部の描いた顔出し看板。かわいい!高校生がワイワイ言いながら描いた様子が目に浮かびます。


「道の駅」では、ここでのお祭りや、歴史を見学。お土産物はサッと見て、私的に一番学べるのは隣接のスーパー。久慈の地元の魚がずらり、安くて新鮮で。この日帰るなら買い込むのですが。この美しいお魚の料理の仕方を教わりたい!


「詰め放題200円!」の根昆布。海草の豊富な久慈です、ここの女性たちは髪美しく、骨も元気、血液サラサラでしょうね。そんな地元のおばちゃんに、この海草の料理も教わりたい!


豆腐といえば焼き豆腐が主流のようです。こういうことは地元のスーパーでないとわかりません。どうやら田楽に使うし、煮物に使うし、「まめぶ」に使うし、豆腐は焼きに限るということらしい。


AKB48の海女姿を発見。こういう都市部の女性たちは最新ファッションは得意でも、焼き豆腐の煮しめは作れないでしょう。こういう若い女性と、私のような都市部の何もできないおばちゃんと一緒に、久慈の女性たちからここの味を教えてもらう、そんな機会を作りたいと強く思いました。


さて、夜も暮れていくと、ご飯そしてお酒を求めて・・・です。3人の町民のかたから推薦のあった、「女性一人でも大丈夫な地元の魚の食べられる店」に行きました。正式名は看板にありますが横に大きく書かれた“居魚屋”という言葉に期待します。


カウンターに座って、まずお刺身を。「地元の魚が食べたいのですが」としつこく東京弁で頼むと、ご主人が「ほとんど地元ですよ」とゆらりと笑います。初めて食べたドンコのたたきが美味しかった。肝と和えてあって、淡白で上品な身と肝が複雑な味を作りだします。


お刺身と一緒の大根ツマがやけにおいしいので食べていると、アレ?このツマはご主人手作りです。大根を薄く剥いて、細く細く千切りに。感心していると「はい、おいしいよ」と大根の芯を渡してくれました。大根のお刺身?も甘くておいしい。


こういうお店なら安心と、今まで何度も失敗をしていたホヤを頼みました。隣の地元のお客さんもつまんでます。これが大正解。新鮮だから臭くない、なんて言ったら失礼なくらいおいしい。海をそのまま食べているみたいです。残ったホヤのおつゆで、もう一合飲みたくなってしまいます。


さて、ドンコを焼き魚にしていただきました。何度も世話をしながらご主人が焼いているな、と思っていたら、単なる塩焼きではありません。ドンコの肝と味噌を和えて、これを皮に塗ってあります。香ばしい味噌と皮、それと一緒に食べるほくほくの白い身。こんな味は初めて。魚を知り尽くしているお店だからの技でしょう。これは東京でやろうとしても無理、久慈に口を運ぶのが正解ですね。


こうしている間に、カウンターに座っている人が皆仲良くなっています。札幌からのご夫婦、横浜からマラソンに来た男性二人組、地元のレディお二人、そして私。魚を挟んで、久慈談義です。あれ?地元の女性たちが頼んだキュウリが回ってきました。「地キュウリ、おいしいから食べてみてね」と笑顔で自慢します。


こんな様子をお店のご主人が笑ってみていました。まだまだ食べたい地魚がいっぱいなのですが・・また来ます!ついでにお伝えですが、これだけおいしくて安い。地元の方が来るお店だからでしょう、交通費を使ってでも久慈の魚をまた食べたいと思いました。都会人はまだまだ魚の旨さに出合っていませんね。


おいしい魚を届けてくれる海ですが、怖い海でもあります。震災のときは津波でこの巨大なブロックも軽々と陸に運ばれたとのこと。今は基に戻されていますが、今でも東北の方々には悲しい海でもあるわけです。


侍浜と名のつく地区で、思い切り明るいお母さんたちに会いました。久慈では子供たちの体験交流が盛んで、仙台などから都市の子が田舎体験をしにやってきます。このお母さんたちは「お金じゃないの、私たちの生きがいなの」と張り切って子供たちの世話をしています。


魚をおろしたり、ここならではのハモを使った「つぼ」というお料理を教わったり。お母さんたちと時間を過ごしているうちに、子供たちは打ち解けて、帰るときは涙を流すそうです。今の子はいわゆる“田舎”がなく、あっても行けばわがまま放題でしょう。こういうところで多少叱られながらも何かをやり遂げる、その間に本当の人の心に触れるはず。久慈体験は、大人にも必要と思いました。

体験交流では民泊をしますが、豪華な旅館並みのお部屋のおうちも・・・。床の間や欄間を知らない子供たちにはいい経験です。民泊受け入れの家は23軒もあるそうです。


通りかかったおうちのブルーの手袋が気になりました。おうちもブルー、漁師さんのおうちです。「海は青いから」青がお好きらしい。

「裏をみな」と案内を受けていくと、ご主人はおうちの裏でヤマメを養殖です。海の近くなのに清水が湧くんですね。


小屋に案内されました。箱には今朝獲ってきた魚です。「今日のお客さんに出すから」と、ご主人はあくまでシャイですが、厚い人情を感じます。ここでまた、お魚について学ぶと漁の話も伺えそうです。


久慈でいろいろなものをいただきましたが、海のものだけではありません。「短角牛(たんかくぎゅう)」というお肉があります。

これは久慈の山側の地区で、森の中に放たれて飼われている黒牛。牛舎に入りっぱなしで高カロリーなエサで脂をつけた牛と違うので、肉には人工的な脂がついていません。それだけに、味が深い。しかもヘルシーです。

脂ギトギトのお肉は少量でもう勘弁ですが、このお肉は限りなく食べられる感じ。久慈にわざわざ食べにくるものをもう一つ発見しました。

久慈は元気になるところです。特に都会の女性たちに来てほしい。来ればほら、こんな私みたいになれますよ