きりたんぽの地で

お仕事で

ご飯をつぶし、杉の太い串の周りにつけ、軽く炙ったのは「たんぽ」。それを切って使うと「きりたんぽ」。きりたんぽ発祥の地・秋田県鹿角市に通うようになって、私はごく最近この違いを知りました。

長いままで甘いお味噌を塗ったのは味噌つけたんぽ、比内地鶏やゴボウなどと切ったたんぽを煮る鍋はきりたんぽ鍋です。この地で、今、新しいきりたんぽの味が生まれつつあります。

「たんぽ」とは、植物のガマの穂のこと「短穂」。槍の練習の時に使う、白い綿の塊「たんぽ」と呼ぶことから。槍にかぶせる鞘に似ていることから。など、「たんぽ」の語源は様々です。

山から木を切り出す「山子(やまご)」という人たちが、「たんぽ」にしたご飯を山中で汁の中に入れて食べていたとか。民俗学者・柳田国男はその著述のなかで、“山子たんぽは秋田県鹿角地方の風習である”と述べているそうです。

また、昭和9年の秋田放送で“鹿角郡花輪町が元祖発祥”と紹介されたとか。いろいろ、鹿角が発祥地らしい記録が残っているようです。

鹿角市では花輪の駅前やあちこちに「きりたんぽ発祥地」の看板を立て、「たんぽ小町」というキャラクターをつくり、「たんぽこまち号」というコミュニティバスを走らせている、という強気の発祥地姿勢。

ならば、発祥地らしく、「たんぽ」や「きりたんぽ」について、鹿角は掘り下げ、日本で一番発信しなくてはならないでしょう。

街なかには、市民の人やお店が買う「たんぽ専門店」がありました。

出来立ての柔らかいものが買えるのはさすが発祥地、これは真空パックのものとは全く違います。しかも大変安い。すっかりファンになりました。

で、ようやく本題、ここで新しい取組が起きているわけです。
ことの起こりは、鹿角市の大湯という温泉場に、道の駅風の施設ができる、造ろう、という動きに発します。

造るのならば、地元の人に役立ち、外の人にも楽しいところにと、地元の人たちは話し合ってきました。

ハードだけでなく、ソフトにも今から知恵を出そうと、今年度からアイディアを温泉のようにどんどん出す「わくわく会議」が始まっています。

誰でも参加できる楽しいワークショップ、名前の通り提案がわくわく、気分もわくわくの会合になっています。

「計画している施設では、ぜひとも地元の味を出そう!」と、毎回様々な試食が。私など全く知らない味を、地元の女性たちが作ってきます。

「味噌つけたんぽ」がお得意の方の、味噌の味には感服。何本でも食べたくなります。

「お汁粉があるといい。お餅の代わりにきりたんぽを入れたら?」という試みも。あんこときりたんぽ、これもあいます成功!おいしい。

先日は、今風の創作きりたんぽも登場しました。写真左から「チーズバジルソースきりたんぽ」「チョコきりたんぽ」「きりたんぽタージュ」「シナモンシュガーきりたんぽ」「ニンニクアンチョビ海苔かけきりたんぽ」。

いずれも量を食べるものではないですが、紙コップなどに入れて、ちょこっと食べるきりたんぽがあってもいいのではという発想です。ワインにあうおつまみ風だったり、コーヒーにあうスイーツきりたんぽだったり。

地元にある定期市で実験カフェをやってみようと、燃えております。

きりたんぽを食べながら、大湯のまちをお散歩したい。「きりたんぽウォーク」もやってみようということにもなりました。

次回は、みんながきりたんぽを使ってのアイディアを考えてきます。私は世界初の「きりたんぽミュージアム」を絵にしようかな。

わくわく!