ススキ騒動

ゆとりある記

長野県平谷村の温泉宿泊施設「ひまわり館」に泊まりました。周囲のヒマワリの花は終わり、ススキが光る季節です。

「このススキ少しいただけませんか?」とお願いしたところ、支配人はじめ、同行の方々までご協力いただいてのススキ狩りとなりました。

地元では価値のないススキ、「食えないから」だとか。でも、私、都市のおばちゃんは大喜び、近所におすそ分けまでしたのです。
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「ひまわり館」はむしろ隣接する「ひまわりの湯」で知られます。ナトリウム炭酸水素塩温泉、ツルっとする肌触りのお湯はぬるめで、永遠に入っていたくなるやさしさ。

大理石の彫像が抱えるヒマワリの花からお湯が出る露天風呂は、肌と同様、気持ちもツルっとしてくるようです。

ここで、馬刺しや地元の豚シャブや鯉の甘露煮などご馳走をいただいたのですが、私の頭は「明日の朝、帰りにススキをいただきたい」の想いで一杯でした。

別に箱根の仙石原のようにススキ野原があるわけでなく、ごく田舎の普通の景色なのですが、道際にスルッと伸びるススキがなんとも美しい。飯田からこのお宿に着くまでずっとそう思っていたのです。

「ススキですか????」ご飯を一緒にいただいていた、私以外の4人は唖然。さらに「ススキなんか欲しいんですか?・・・・」とあきれる。

「でも、うちの方の花屋には売ってないし、あっても、5本350円だし」などなど説明すると、「地元じゃ食えないものは価値がないと思うからなあ」「ススキなんかを喜ぶ、東京の人の感覚が分からないよなあ」と言いながらも、朝には協力してくれるということになったのでした。

真っ青な南信州の空です。その下で、支配人さんが朝見てきてくれた、切り易い場所のススキに向かいました。

道があって、草むらに入り込まなくても簡単に切れるところでないと、こちらがススキの葉で切られます。

ナイトのようについてきてくれた前日のワークショップ参加者お2人と、ススキ狩り。

ほんの15分くらいのことですが、いい時間です。なるべく開いていない、出たばかりの穂を捜していると、虫の声やら、近くの水の音やらが大きく聞こえてきます。

そして、強い草の匂い。ただ、おしゃべりして歩いていたら、気づかないでしょう。

欲張っても持って帰れないし、活けるところもない。で、数十本で我慢。新聞紙をいただき、ぐるぐる巻いて、お土産の出来上がり!

そのまま、車、高速バス、地下鉄と乗り継いで、夕暮れに六本木ヒルズの麓に到着。ススキは、我家の冷蔵庫の上に、南信州の景色を創ってくれました。

知り合いに数本ずつのおすそ分けも、みんな「今年初めて見るススキだわ~~」などと喜んでくれました。「ススキ、ススキ」と騒いだかい、あり。

もちろん、いただいた糖度20パーセントの平谷のトウモロコシ、これは“食える”お土産もありがたく、そしてすばらしく美味でしたよ。