地方のまちのいいお店

お仕事で

商店街の活性化などを仕事にしていると、地方のまちでへえ~と感心する店に出会います。少ない人口の中で、工夫して、主張を持ち、商いをしている。よくやっているなあと、こちらが勉強に。

要は、東京と同じ賑わいの連続を求めるから、さびれてると思うわけで、ポツンポツンとでもいい店があればそれで良し、とすることが大切なのではと思います。例えば、栃木県足利の場合・・。

「花にかこまれてGarden Cafe 南の麦」という長い名前のお店。住宅街の駐車場で手作りパンを売っていて、そこから坂道を上がるとお店。道には花の苗の販売も。

花が大好きな家族がやっているとのこと、普通のおうちの庭がだんだんガーデンカフェになってしまったんでしょう。スキのないガーデニングとホテル並みの完璧な接客、そうした緊張感をのぞむなら他のお店に行きましょう。

ここは花の好きな小粋なおじさま家族の、ライフスタイルに混ぜてもらうという店です。のんびりとゆるい日差しを楽しみながら、花を眺めてオムレツを食べる。パンはお土産に。

花の種類の選択に知性を感じます。家族のアットホームな雰囲気と、自然体の花壇、風が気持を柔らかに。「ああ、花に囲まれる時間っていいなあ」と思えるお店です。


「やきそば一(いち)」は村山機工という看板の下に寄り添ってあります。うかがったのはまだ暑い秋の初め、お店に入ろうとすると日よけの黒い寒冷紗の先からひんやりミストが。村山さんは機械関係の仕事もしているので、こんな工夫は簡単なのです。

昔近所にあったようなやきそばだけのお店。子どもが小銭を持って走りこめる感じ。店内には既にお客さんではない子供たちがニコニコ。勉強机でドリルをしていたり、折り紙をしていたり。

村山さんと弟さん家族の子がいつもこうしているので、子どものいない家族や、一人暮らしでさみしいお年寄りにはたまらない温かな環境でしょう。

メニューを見て驚き!あまりの安さ。子どもやお年寄りに来てもらい、ゆっくりしてもらう“場”を作りたかったとのこと。だから、少しだけ食べたい人用メニューもあるわけです。とはいえ結構な量ででてきますが・・。

「ああ、子どもがコロコロいる、本音の話ができるところで一休みしたなあ」と思えるお店です。

「コバラ ベーグル」では、昔、自衛隊にいたお兄ちゃんが、一大決意でベーグルを焼いています。写真でわかるかどうか?こだわっています。

「栃木県のイチゴから作る天然酵母使用」「栃木県の地小麦を使用」「地元の名水を使用」「生活習慣病予防士の視点で」と看板に書いて胸を張っています。

小さなお店でしたが、このたびリニューアル。もと美容院だったお店を、ひたすら自分と仲間で美しく塗りなおしベーグルショップへ。

ここは、『元祖足利名物ポテト入りやきそバーガー』という変てこな(でもおいしい)ご当地グルメも誕生させています。ここのベーグルを求めて足利にやってくる人も。

「ああ、こういう地方のまちでこんなこだわりでベーグル焼いてる店があるんだあ」と思えるお店です。

ほら、ね、どれもが、東京の名店などといわれるお店にはない、違う「ものさし」でやっている立派な店でしょう!

いいお店が連続してあれば、商店街として人も集まるのでしょう。が、大型店に圧倒された地方のまちでは、ハードとして、名店が軒並み続く環境はいまや造れません。

従って、大型店や東京とは違う座標軸で勝負する、今回ご紹介のようなお店が育ち成立していきました。この3軒をもし既存の商店街に押し込めたら、個性はなくなってしまうのです。

こうした地方の点在するいいお店を、地元住民が強烈に指示し愛することで、○○銀座というような昔の商店街式の賑わいとは違う、“活性化”がありうるのではと思うのですが。