勝手花壇
実は、うちの近くの歩道の花壇を勝手に世話しています。ここに引っ越してきた4年前、この花壇はドクダミや草が繁り、ゴミが集まりひどい状態でした。六本木ヒルズ近くの商店街の歩道、誰かの管理下にあるはずなのですが。
しばらく我慢しましたが、ある日から草を抜き花を植え始めました。怒られるかと思ったら、道行く人が喜んでくれます。ま、いいかと思っております。
花壇といってもごらんのように、巨大ではありません。でも、写真の奥ににそびえるのは六本木ヒルズの住居棟、すぐ近くには小学校・高校があって、子供達も通う歩道です。
住む人、通学通勤する人、街に遊びに来る人やたら人が通るのに、草とゴミはないでしょう?!と、最初は夜中にこっそり草を抜き、ゴミを集めていました。
誰かが植えた?雪柳がボウボウで車道にせり出していたのを剪定、土も石灰で一度消毒、肥料も入れて、当初はパンジーや日々草、ペチュニアなどを植えました。
きれいになると、おびただしく捨てられていたゴミが少しは減りました。だんだん私も「誰かに注意されたらやめればいいや」と腹をくくり、深夜でない夜に世話をするようになりました。
水やりが大変です。近くの公衆トイレにバケツやペットボトルを運び、水を汲んで花壇に運びの繰り返し。
で、昨年の秋に手間いらずのゼラニウムの苗を植え、通年ゼラニウムの花壇にさせてもらいました。ゼラニウムなら多少の日照りには耐えてくれます。
そして、写真は2週間前の様子。繁りすぎて花がつき過ぎたので、少し剪定をする前の様子です。
勝手花壇をやっているといろいろな交流があります。公衆トイレを使うタクシーの運転手さんが一番の話し相手。
割ぽう着をしたおばさんが、彼等がトイレを使っている間水を汲めずに外で待っているわけですから、一言二言そのおばさん(私)に声をかけるわけです。「お母さん、マメだねえ」とか、「おばさん、せいがでるね」とか。
私が草を抜いたり水やりをしている様子を、タバコをふかしながらずっと眺めている運転手さんもいます。こちらが二シャリと笑うと、向こうも二シャリ。いい感じです。
この前は、気がつくと素敵なママさんと子どもが眺めていました。「ゼラニウムは剪定したら新しい芽がでて、また咲くんです。持っていきませんか?花を楽しんだ後、土に挿せばつきますよ」なんて説明すると、「わあ、いいんですか?やってみます」なんて喜ばれたりして。
こうして剪定しながら「お花いかがですか~」と呼びかけると、反応も様々です。若いカップルが、「いただけるんですか?何て花ですか?いつもこの花壇かわいいねって話してるんです」なんて言ってくれて、こちらは感激!
「ほしいけどこれからまだ仕事で」とか「満員電車に乗るから無理」とか。運転手さんが「車内に飾るから一本ください」とも。
売りつけられると思うのか「ノーノーノー」と恐ろしがって逃げる外国人もありました。
近くの整体に来たおばあちゃんは、迎えの車が来るまで立ち話。「まあ、係りの人かと思ったら、ボランティア?」「そういうわけでもなく、気になるから勝手にやっているんです」「ここは子どもが通学するから、朝きれいな花が咲いてるだけでも違うと思うわ、ご苦労様」
こんなことがあると、勝手花壇作業後のビールがおいしいわけです。でも、普段ほとんどの通行人には花壇作業のおばさんは風景の一部。私の横をにぎやかに通り過ぎていきます。
上司の悪口を言いながらの女性たち。けんかしながらのカップル。おいしかったね~と食事の感想を細かに話すグループ。イヌと会話しながら歩く散歩のおじさん。も~疲れたよ~と携帯で話しながら歩くサラリーマン。様々な人間模様が背中に聞こえます。
場所がら、酔っ払いたちが花壇の中に頭を突っ込んでもどす、ということも多いもの。でも、もはや慣れました。肥料をいただいたと思いましょう。
ファストフードのハンバーガー、ポテト、コーラ、すべてを食べたそのままのゴミを数人分捨ててある。コンビ二のサラダの半分食べ残しとチューハイの缶も。こういうのも慣れました。
最近はゴミを平気で捨てていく人の食べているものには傾向がある、と思うようになりました。これも一つ学んだことです。
さあ、今日の作業も終わり!とうちに戻ると、マンションの窓から眺めていたらしき夫が「あんたの姿、上から見てるとかなり怪しいよ」とのたまう、これにももはや慣れました。"