母の日に 

ちょっとしたこと

施設にいる、101歳、寝たきりの母の言葉です。「こうやって、おしっこ・うんちを他人の世話になるようになれば、どんなに偉い人だって、東大出だろうと、美人だろうと同じだね。死ぬ時はみんな一緒、平等だよ」 頭はしっかりしているので、時々こういうことをつぶやきます。だから、動ける元気な者は、世の中をより良くしなけりゃ、と思う私。いろいろ贈り物を届けた日ですが、母から私が教えられました。

ーーーーーーーーーーーー

贈り物として、私はシルバーキャリーカートを入手しました。母が使えるわけがありません。毎週通う私用です。車の運転をしないので、大荷物運びがキツいのです。母通いが楽なら、荷物も笑顔もたくさん運べる。結果、母が喜ぶ。だからこれは母への贈り物、というこじつけです。案の定、バナナやジュースなど重い物を運べました。「これなら、智子が楽だね」と、母は喜びました。

行くたびにいろいろ考えます。普段は「地域おこし」やら「スローライフ」やら、つべこべ言っている私ですが、そんなことは今の母には関係ない。お尻が荒れているので「うんちをするたびに沁みて痛いんだよ」「今日は何を運んでくれた?甘いものある?」という世界にいる以上、私の仕事に興味はなく「あんたも歳なんだから、遠くまで行く仕事で疲れすぎないようによ」というのが精一杯です。

まあ、とは言え、なんとか一工夫と思うわけで。季節の花を運んで活ける。なるべく香りのする食べ物、シソの葉やオレンジなどを運び香りも楽しむように。なるべく笑う話題を持ち込む、などしています。

「この前のジャスミンの花はいい香りだったから、ここに来るスタッフさんが癒されるって喜んだよ。お母さんの部屋でスタッフさんも少しホッとするといいんだよ。とにかく忙しそうだから」などと言う母は、自分の部屋を施設の癒し場と位置付けているのでしょうか?元気なら子供食堂などしそうな母ですから、さもありなんです。

スタッフに「ちゃんとご飯食べてる?」「お子さん大きなった?」などと声をかけるのが、母の「社会参加」で、自分の部屋を癒し場と思うのが「地域おこし」、花の色、香りを丁寧に楽しむのが、母の「スローライフ」でしょうか。寝たきりになっての地域おこし、スローライフとは?私にとってはそれが課題なのです。

今回、静岡の新茶を届け、丁寧に淹れました。「やっぱり旬のものはいいね」と味わいます。私は、「まだまだ長生きしてよ」と言いました。