坂のまちの赤坂さん

ゆとりある記

NPOスローライフ・ジャパンのメルマガ「スローライフ瓦版」に、“長崎・斜面地の古民家暮らし”を連載された赤坂伸子さんのお店「カフェ燈家AKARI-ya」を訪ねました。バスを降りてまず驚いたのが急階段、本当にどこも坂だらけです。その坂の途中にある小さなお店で、ご夫婦が出迎えてくれました。栃木県那須塩原市から移住しての新しい暮らし。急坂ではありますが、きっと一歩ずつお二人で登っていくんだなと思います。

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「カフェ燈家AKARI-ya」のホームページにアクセスが詳しくあるので、たどり着くのには自信がありましたが、バス停を降りてしばらくポカンとしてしまいました。「なに~~?この階段!」という驚きです。長崎が坂の町、斜面に家が建ち、だから夜景もきれい、ということは頭ではわかっていたのですが実際に潜り込むと・・・。

買い物どうするんだろう?足が鍛えられるなあ。夜、踏み外さないように白いペンキが塗ってあるんだなあ。坂観察で時間がたちます。今まで観光で表面だけ見ていた長崎とは違う、現実を見ました。

ゴミステーション。赤坂さんから以前伺っていました。「急坂を緑色のソリみたいのに乗せて、ごみを下ろしてくれるの。回収の人大変だよ~」と彼女が言っていたのが、これですね。思わず写真を撮りまして。これに乗って坂を滑ったら楽しいだろう、なんて不謹慎に思ってしまいますが。

さて、目指すお店は、道路のカーブのところから細い階段を降り、折り返してさらに階段を行ったあたりです。こんな写真が撮れてワクワクしますが、よくぞ遠い栃木県から、ここに引っ越す決意をしたものだと思いました。車でドアからドアへ、移動できる世界とは違う坂を足でよっこらしょ、なのですから。引っ越しの荷物運びも大変だったでしょう。

あった~~!「燈家」、「あかりや」と読みます。斜面にある家々の灯りの一つになりたいという思いで、名前が決まったのだそうです。私の目指すのは実はミルクセーキでした。

ガラス戸をガラガラと開け、「ただいま~~」と入る感じの、お家のようなお店です。眺めは斜面の風景。テーブルに簡単な木のおもちゃ、大人でも遊びたくなります。テーブルと椅子がみんな違うセット、その日その人が気に入るところに座ればいい。ご夫婦で、手作りでリニューアルした様子がうかがえる室内です。

今日のメニュー。休みの日は夫婦であちこちの直売所に出かけていろいろ仕入れてくる、ということだけあって、赤坂セレクトの美味しい素材を使ったお献立。那須高原のハーブなども使われています。私は食いしん坊なので、ホットサンドを二人前頼みました。

一度に二人前は無理なので、一つずつ食べて、半分は持ち帰り。飲み物はライムの薄切りがコラショと入ったライムソーダ。これが暑いなか、坂を歩いてきたのどに気持ちいい。「そのライムが、大きな声では言えないけど、本当に安く手に入るのよ。この辺ぐるぐるめぐると美味しいいいものばかり」と赤坂さん。

赤坂伸子さんです、私は那須町で知り合いました。以前は、渡辺伸子さんでした。結婚して赤坂さんだったのですが、旧姓のままで仕事をしていたのでした。移住を機に赤坂に。坂のまちですもの、ぴったりですね。「いいでしょ、この建物。ガラスも古いのだし、よくぞこんな昭和の家が残っていたと思って、もううれしくて」といとおしそう。

確かに、グリグリと回す昔の窓のカギ、木の窓枠、外の庇を支える金具の曲線や丸のデザイン。デザイナーだったご主人、タウン誌を作ったり、お店のブランディング、まちおこし、観光の分野で活躍してきた伸子さんには、宝箱のような家でしょう。「いままでやってきたことが、すべて今のこの暮らしのためにあるようなもので、すごく役立っているの」伸子さんの大きな目がクリクリと輝きました。

「こんなすごい坂の下の方にもお年寄りが住んでいて、階段を毎日上っているの。元気だよ~。近くの学校へ通う子供たちも坂道を歩いてく。学校から子供たちの声が坂を上がって聞こえるの。いいよ~~~」斜面地暮らしの面白さを熱く語る伸子さんの後ろで、ご主人が丁寧にコーヒーを運んでいます。

お店は小さいですが、坂の途中で逃げ込む籠り場のような空間。センスのいいお二人が、ほんわりと包んでくれます。あんまりセンスを振りかざされるとお客の方は息が詰まるのですが、お二人のお人柄でしょう。自然に、こちらの肩の力が抜けていきます。「朝来てね、14時までいていいですか?なんて人もいるの。電気借りま~す、てパソコンひろげて」と伸子さん。近くにホテルがたくさんあるので、そこに泊まって一日ここにいる、私だってそんな時間を過ごしたい・・・。

お茶目な伸子さんと、マイルドな微笑で包んでくれるご主人。ミルクセーキと薫り高いコーヒーのような組み合わせです。いい夫婦だなあ、見習わなくちゃ、と思います。

また来るね、と別れてバス停に立っていると、伸子さんが走ってきました。「野口さん、領収書わすれた。ハアハアハア~~」あの急坂を追いかけて、駆け上がってきてくれたんですね。

お店に飾られたご主人の絵、なかでも私はこれが好き。やさしく笑いかけてくれている花たち、この絵からいい風が吹いてくるようです。

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※NPOスローライフ・ジャパンのホームページにある「スローライフ瓦版」の少し前のものをご覧いただくと、赤坂さんの文章が5回掲載されています。https://www.slowlife-japan.jp/

『ソトコト』ウェブ版にここに至るまでのことが詳しく載っています。https://sotokoto-online.jp/2418?fbclid=IwAR2b2jntJI7IfQNQj2s7LS09_eZbb-_dlEq0UWjj3uN1aBLHorzVivsw_xI

燈家AKARI-yaのhホームページはこちらです。https://nagasakiakariya.amebaownd.com/