手描きマップ
泊まった宿のトイレに、そこの女将さん手作りのマップが貼り出されていました。宿から歩いて15分位の範囲が、詳しく。素人作品らしく縮尺などはおおざっぱですが、可愛い絵や文字から女将さんの気持ちが伝わります。おすすめの場所は写真付き。神社の古いベンチや街路灯、赤ちゃん用の鳥居など。地元情報がほほえましい。思いがけず、トイレでくつろいでしまいました。
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場所はおなじみの雲仙市、国見町神代(こうじろ)というところ。歴史的な建造物のある海辺のまちらしい小さな駅です。
駅前に既に手描きのマップがあって、なんだかほっとします。
何度も泊っている「旅館末廣」。ちょうど地元の一本釣り漁師さんの奥さんが、宿に魚を運んできていました。奥さんも昔は船に乗って釣っていたそうです。
宿の入り口に、魚の干物?と思うと、ビーフジャーキーを作成中。船乗りさんから作り方を教わったそうです。
ここのお料理は繊細で、野菜がたくさん使われているのがうれしい。ご主人の調理によるものです。
食べきれない量を出す旅館料理がいま、問題視されていますが、ここはちょうどいい量。
「食べきれない、どうしよう!」と悩まずに、「これ美味しい、どう作るんだろう?」とお料理に対面できます。
「地元のヒラメですよ」「地元のメバルですよ」と当たり前に出してくれる。
煮魚はこういう宿で食べるに限りますね。
で、美味しそうな食べ物の話題の後で恐縮ですが、本題のトイレです。観光ポスターやお土産宣伝チラシではありません。貼ってあるのが「末廣旅館 女将のざっくりポイント 神代マップ」の裏表。
ここの女将さん作のマップです。もちろん、手持ちで歩くためのマップなのですが、これは拡大して貼ってあります。トイレ、ベンチ、自販機、ぶらりと歩くときに必要なことが描かれています。宿のには「給水・オムツ交換OK!」の文字も。
「ポイントのみ重視の地図なので、道路は正しい形状ではありません」とのコメントが、なんとも潔い。笑えます。
「神代小学校の大楠 ずっと昔は、この大楠の下で授業があったと聞いた時には羨ましかったな~」
「淡島神社 社の中にあるミニミニ木製鳥居。お礼参りの時にくぐらせる。可愛すぎる💛」なんて解説で写真付きのポイント紹介。
このまちに生まれたら、みんなこのミニ鳥居をくぐるんだろうな~。大楠の下で何か催しをしたいなあ~。眺めながら、こちらの想像力が膨らみます。
あれ? トイレにずいぶん長く居ました!!!
マップの作者、古賀理代さんです。「ええ?狸と一緒に写真撮るんですか~~ガハハハ~~~!」と、大笑い。
マップというと、どこかに行くのに迷わないための地図、正確な地図、と思いますが、ここの地図は違いました。ストレスだらけで肩の凝る毎日の中で「ざっくりでいいじゃない!」「自分視点でいいじゃない!」「迷ったり道草してもいいじゃない!」と、くつろぎの世界へいざなうマップなのでした。
なので、実際に歩かなくてもすっかり心が安らぎます。美味しいお料理は身体を整えてくれて、元気が出てきました。