「そうなよか農の雲仙」展

ゆとりある記

雲仙市地域おこし協力隊・堀口治香さんのイラスト展を見ました。「そうなよか」とは「すごくいい」という意味。都会から移住した彼女は中山間地の風景、農ある暮らしに感動し、得意のイラストでそれを伝えるフリーペーパーを作りました。農作業も方言も、ほんわかしたタッチで紹介されています。自然や農の世界が本当に大事だ、と、描かれた線の一本一本が語りかけてくるようです。

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雲仙市国見町の農産物販売&カフェのお店「山の駅べジドリーム」で、この展覧会は開催中です。(3月いっぱい)彼女のごあいさつ文から抜粋しましょう。

「私は2019年の秋に東京から雲仙市に越してきました。おもに山里の農業集落のお手伝いをしています。1年半活動する中で、地域にはそこにしかない風景やさりげない小話があることに気がつきました。今回展示するフリーペーパー「雲仙山間合号(うんぜんやまあいごう)」は、雲仙市の中山間地の風景や人々の暮らしを皆様にもっと知ってもらおうと思い、恐る恐る始めたものです。この機会に多くの方に見ていただき、山里の風景を残していく一助になれば幸いです。」とのことです。

お店の2階に上がると、堀口さんのゆる~い柔らかい線で描く絵と文字の世界が広がっていました。A4サイズのフリーペーパーが大きく引き伸ばされて、展示されています。「ああ、棚田ってこんなラインだったんだ」「ここの地名にはそんな物語があったんだ」などいろいろ想ってしみじみ眺めてしまいます。

彼女のえらいところはこの展覧会に向けて、1人でかっこよくサクサクとやらなかったこと。迷い迷い、人のアドバイスを聞いて「ああ、そうですね~」「そうか、そうなんだ」とゆっくりぐずぐずやってきたために、いろいろな人が彼女を支えました。

会場を提供してくださった「べジドリーム」のご夫婦も、まるで娘の初展覧会のように面倒を見てくださって。「壁に貼るだけでなよく見えないからスポットライトが当たるように」と工事をしてくださったり。おやつなどなどを思い切り差し入れしてくださったり。

私も毎週のようにzoomでミーティングに参加しました。なので、個展ではなく、みんなの展覧会という存在で、一回でも彼女と話し合った人たちは、自分事としてうれしいのです。もちろん、ここに描かれた、農家さんや地域の方々は大喜びでしょう。

上が最新の2021年2月発行のもの。その上が、創刊号2019年12月のものです。

「山間号」だけではありません。彼女いわく、「どこかやわらかくて勢いのある独特な方言」がこれもたくさん展示されています。あ、「そうなよか」の言葉を発見!でも、同じ雲仙市でも少し離れるといい方がまた違ってくるとか。方言とは本当にその地に根ざしていることがよくわかります。

方言イラストをみてクスっと笑っていたら、階下から生の方言が。「そがんする~~?」「よか~~?」「ま~~だよかたい!」お客さんでしょうか、納品の農家さんでしょうか?大声でせいせいと叫ぶ声に元気をもらいました。

地名もおもしろい。日本の各地方ではこうした方言や地名が今もしっかり存在しているのです。これらを大切にしていかなくては。

そしてこんな展示も。

農のある暮らしだけでなく、海の、浜の生活文化の紹介も。

窓から見える風景は、いま横長の紙に写生中。「いま製作途中」としてありました。風景には、山の名前や解説がこれから書き込まれて行くようです。

東日本大震災10年目にあたる日の翌日にこの展覧会をみて、心安らぎ、何が大事かを教えていただいた気がします。堀口さんありがとう。