「ほしかいも」作り

お仕事で

奈良県十津川村谷瀬では干し芋のことを「ほしかいも」と言います。なぜか?「昔からそうだから」なんだそうです。その作業を手伝いました。集落でできたサツマイモを甘さが濃くなるまで保存し、良い所だけを蒸した後、さらに厚く皮をむいて熱々を干します。もともと寒風で食べ物を干す文化のあるところ、今年、ここの「ほしかいも」は大人気だそうで、予約が一杯。皆さん手のひらを半火傷しながら頑張っていました。
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「つくりば」という名の加工所。加工品も作れば、人間関係も作るのでこの名があります。確かに朝から笑い声が聞こえていました。

今年は400キロのサツマイモがとれたそうです。集落の子どもたち、川向うの地区の子どもたちも混ざってイモ堀りもしました。「ほしかいも」は集落の収入源であり、イモはみんなが仲良くなるための物でもありるわけです。谷瀬集落のもと総代さんが、冷たい水でごしごし洗います。「こういう黒いところが蜜の塊、そうとう甘いよ」

サツマイモは掘りたてを食べても甘くないそうです。11月ごろから堀ったイモを、今まで置いておくと甘さが増す。イモを腐らせないで、凍らせないで、ここまで保存することが技術なのだとか。初めて知りました。だから美味しいんですね。

 

いまの総代さんが、イモの上下、傷んだところ、蜜の塊など、すぱすぱ切って落としていきます。ここでイモは3分の2ぐらいの大きさになります。「いいとこだけ使わないと、味が悪くなるから」と。切りおとしたところをいただいて帰っても、充分料理に使えそう。横では巨大炊飯器が芋を蒸しています。

集落の家で昔使っていた、大きな炊飯器が再利用されていました。家族が多かった時はどこの家でも一升炊きなどが活躍していました。「野口さん、こういう大きな炊飯器あまっているとこあったら教えてね」なるほど、今や、なかなかないのでしょう。

イモも炊飯器も皆違う。一律にはいきません。竹串を刺して、蒸しあがったかどうか様子を見る。まだなら水を足してもう少し。この時点で、もう美味しそう。

記録はとっていますが、なかなかこれが難しい。「えっと、何キロをどうしたんだっけ?水は何CC入れた~?」カレンダーの裏が活躍しています。

蒸しあがったら熱々のうちに皮をむきます。この時も、薄くむかないで、皮と表面のイモを一緒に削り取る感じ。最初のイモは、もう半分くらいになったのでは、、、。薄い手袋くらいでは熱い熱い、でも熱いうちでないと剥けない。「アチチ、アチチ」両手はもう、みなヒリヒリ痛い、半分火傷状態です。

最後に登場するのが手製の芋切りカッター。集落の大工さんが作りました。最初はテグス糸を張っていましたが、イモが熱いので伸びちゃう。ピアノ線を買ってきて張っています。「このカッター、専門のを買えば9000円以上するんよ!」とご本人は自慢顔。必要なものは、なんでも作る集落です。

このカッターで均等に切る。それを今度は青い干し籠に、そっと並べていきます。

慣れない手つきのこのおばちゃん、あまり役立たない私、野口であります。そもそも、毛足の長いセーターなど着てきて、食品を作るのにふさわしくない出で立ち。このカシャカシャの赤い上着をいただき、作業に参加できました。普通、籠の一番下から並べますよね~~~~~(笑)。

柚子をくりぬいて、なかに味噌などを詰めて、寒風に2カ月ほど干す珍味「ゆうべし」を得意とする集落です。酒米も、たっぷり天日干しして「純米酒谷瀬」を仕込みます。干すのはお得意。特に真冬の風は美味しさを育ててくれる。籠がゆ~~らゆ~~ら揺れながら、「ほしかいも」美味しくなあれと歌っているようでした。

もともと干し芋を普通に作る土地の人には当たり前のことかもしれませんが、食べるだけだった私は初めての作業。こんなに面白いとは!作業をしながらの、地元の人達とのおしゃべりも楽しい。参加した学生さんもはしゃいでいました。繊維とビタミンが豊富な干し芋は、最近はお洒落なおやつとして注目されています。「ほしかいも」作り体験は、新しいツーリズムプログラムにもなりますね。