オリーブの樹を残して

お仕事で

5年間通った雲仙市の仕事が、一区切り。いよいよ最後というとき、造成中の「観光オリーブ園」に招かれました。「雲仙人(くもせんにん)」プロジェクトのお仲間、稲田信忠さんの手作りオリーブ園。オーナー制の第1号にならせていただきました。「ここに野口さんの樹があれば、また来てくれるでしょう?」稲田さんの言葉がグッときます。私のオリーブに、必ず会いにいきましょう。

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稲田さんはもともと機械開発がご専門。ジャガイモの選別機やゴルフ場での靴の泥落としなど、これまでにたくさんの発明をして特許を取られています。その固いご商売の方が、数年前から農の世界にチャレンジされました。ナチュラルファーミング合同会社を立ち上げ、休耕田にオリーブを植え、それを商品化までしています。今、作っているオリーブ園もその一環、稲田さんの後ろにみえる段々畑に、既にたくさんのオリーブが植わっていました。

ここは、もとはレンコン畑にだった場所。それが放置され、左の写真の様に荒れていたそうです。「こんな風になっていると、野犬やイノシシが住んで、どんどん荒れていくんです」と稲田さん。それで、3ヘクタールの土地を借りて、友達たちと重機を使い、休日ごとに作業をして綺麗にしていきました。右の写真で全体が見渡せます。

場所は雲仙市役所のすぐ近く。国道からすぐのところ。既に入り口から見ると、オリーブ園の雰囲気になってきています。「完成は来年かな~。誰でも無料で入れるようにして、オリーブのなかを散歩してほしいんです。もうすでに、犬の散歩に来るかた多いですよ」と稲田さん。「観光オリーブ園にはキッチンカーに来てもらって、毎週いろいろなものが食べられるようにしたい。もちろん車いすでも回れるようにしたい。イベントもしたい」と夢は広がります。

左の写真が11月、右が今年の2月です。敷地に水の湧くところがあり、そこから流れを作りました。11月にはまだ石が山積みでしたが、2月の終わりごろには護岸に使われてきちんと積まれています。とても素人仕事とは思えません。「みんな面白がってやってるんですよ。石もあちこちから運ばれてくる。工事などで石がでて、捨てるんなら持ってきてと頼んであるんです」という端から、石が運ばれてきました。

オリーブを育ててどうするのか?今既に、稲田さんは「オリーブオイル」はもちろんのこと「オリーブリーフティー」オリーブの葉の粉末を使った、カステラや炭酸飲料など作って販売をしています。「農業やっても売る先、出口がないとね。しかもうちは有機JASを取得してるんですよ」安心安全なオリーブ製品なのです。

オリーブの葉は枝ごと収穫し、室内で良い葉だけを選別して採ります。こういう作業には、高齢者や障がいのある方が活躍しています。「皆さんすごく丁寧な仕事をしてくれますよ」と稲田さん。

若い人も応援しています「移住してほしいと言っても仕事がなくちゃね。安全なオリーブを育ててくれれば、全部買い取るからと若者に言ってるんです」

移住希望の若者、新規就農者、高齢者、そして障がいのある方も、オリーブできちんと暮らしていけるように、というのが稲田さんの構想。一見強面の稲田さん、笑顔はとってもあったかでチャーミングでした。

私はこの樹を選びました。大雨で一度ダメになった樹、伐採されて切り株だけになっていたものを稲田さんは復活させています。オリーブは強い!そのアッパレなパワーを私もいただきたくて。「お母さん、東京にいるけどここでぐんぐん育ってね。また来るからね」と言い置きました。

雲仙市でまちをよくしようとしている人たちを“神通力のある仙人”だ、として、「雲仙人(くもせんにん)」と呼び、その人たちが繋がって、人×人で、もっとパワフルになろう!と進めてきた「雲仙人(くもせんにん)プロジェクト」。一人ずつを紹介する『あいにいかんば雲仙人』という冊子も作りました。

今度会うとき、稲田さんは何をやっているんだろう、そしてほかの雲仙人はどんなことを始めているんだろう。5年取り組んだこの繋がりがどんどん広がり、深く根を張ってくれればいいなと思います。また私のオリーブにあいにいかんば。