お試し歴史ウォーク

お仕事で

横浜市戸塚区の、あるマンションのまちづくりを手伝っています。ワークショップでアイデアは山盛りですが、腕組みして考えてばかりじゃつまらない。ならばお試しで行動を、と希望の多かった「歴史探訪」のお散歩を実行しました。講師はもちろん住民のお一人。立派な資料も用意されて、楽しい語りとウォークが1時間半。知識を学んだだけでなく、皆さんが急に仲良しになりました。

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集まったのは10人ほど。同じマンションの住人です。まちづくりのアイデアを出してみたら「住んでいるまちにどんな歴史があるのか知りたい」という意見が実に多かった。それでは実際に歩いてみよう、本格的に勉強する前にお試しでやってみようということなのでした。

まちづくりの委員の中に歴史に詳しい方があり、資料をきっちり作ってくださいました。しかもお話が面白い!歴史に興味がなくてもついつい引き込まれる。「こういう偉人がこのまちにいたことをもっと我々は誇りにしないと!」と、力強い決意も。歴史の学者さんなら、知識は身につくでしょう。でも、「ここに住んでいるならば!」という心構えまでは語りません。同じ住民だからこその話です。「そんなところに住んでいたんだ~~」と皆さん目からうろこのことが次々と出てきます。

その昔、ここは武蔵の国と相模の国の境目だったとか。境になるケヤキの大木がいまも立っています。

これが「境木」。根回りの大きさからみて、資料にある「江戸名所図会」に描かれている樹なのでしょうか?かつては人や馬で賑わった、江戸から箱根に向かう重要な場所。牡丹餅が売られていたようです。ならば、今度「境木牡丹餅」として何か催しの時に皆で作りましょうか?

本日のご案内人からいろいろうかがった中で、一番印象深かったのがこのこと。「石碑などは表だけ見ないで側面、裏面を見るといろいろ興味深いことがあります」

確かに、「境木」のあるお寺の境内にあるマスク姿のお地蔵さんの土台の石。その側面には「日本橋平松町」の文字があります。そしてご案内人はさらに説明。「この昔の地図を見てください、日本橋の平松町、ほらありますね。今のあのビルがあるあたり」え?では江戸時代にそこから来た方がここに奉納したものなのか?その人は牡丹餅も食べたのか?いろいろ想像が膨らみます。

などなど、沢山学びながら歩く道すがら、竹藪から「ホ~~~ホケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ ♪ ♪」鶯がご機嫌に迎えてくれます。私はすっかり昔の旅人気分です。

お仲間の一人のお若い女性が「タケノコ、大きい~~~」とビックリ。彼女はここまで育ったのを見たことがないのでした。この皮がむけて青い竹になるんだよ!こういうことも学びです。

 

歴史ウォークではありましたが、各自興味は多様に広がります。「このお家、塀がすごいね」「え、昔ここは鎌倉領だったの?それなら“鎌倉殿”のテレビがぐっと身近になる」「このお墓の横に以前住んでいたんです。そんな偉い人のお墓って知らなかった」「膝の痛みは毎日1万歩歩くと直りますよ」「この花、うちのマンションにもあるね」「剣術の達人のお屋敷、猫も強そう」

でも、それでいいのかと思います。歴史を知りながら、実は皆がそれぞれの人を知る。お互いがぐっと仲良くなる。こういうことを繰り返せば、マンション住民の繋がりはどんどん濃くなっていくことでしょう。それがまちづくりへの道なんだと思います。