「和久傳ノ森」

美味しい話題

京都府京丹後市にある、「和久傳(わくでん)ノ森」を訪ねました。入ると圧倒的な緑に包まれます。説明には「1,600名の参加で56種の苗木を3万本植えた」とあります。工業団地の中に育てた森。森の中に美術館もレストランも、そしてもちろん工場も。最寄りのバス停は「谷工業団地前」なのに、この静寂と美しさは何!?と驚きます。東京が進んでいるなんて嘘ですね。知と美の塊は、地方にあるのでした。

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手入れの行き届いた芝生とこんもりとした森。三角屋根はレストランです。

森に近寄ると、立て看板がありました。2007年当時はただの造成地だったことがよくわかります。

「植物生態学者 宮脇昭先生のご指導により・・・」この森は生まれたそうです。この土地本来の樹種を選んであるとのこと。植樹に関わったたくさんの方々は、今も自分の森として愛着があるでしょう。この森から、山菜はじめいろいろな恵みがあるそうです。

安藤忠雄さんによる設計、安野光雅さんの美術館です。「森の中の家」と名前がついています。愛らしく繊細な作品、森の中で鑑賞するのにふさわしい。早速お土産を購入。

 

そしてお食事。「工房レストランwakuden MORI」です。

コースでは先ほど眺めた絵の様に、綺麗で楽しいお料理が並びます。

海の幸、山の幸。京丹後には長寿の方が多いということがわかります。海藻を始めいろいろなものを食べられる環境があるからだとか。

感心したのがこの調味料類。ご自由にご自分でという工夫です。私は「山椒香油」が気に入りました。お肉に少したらすと、山椒が香ります。

そして炊き立てご飯。電子レンジ専用のこの土鍋で炊くのだそうです。お米も水もいいので、文句なく本当に美味しい。

ちりめんやワカメをたっぷり。麹や昆布も。お代わり3回くらいしたい。

デザートは和久傳さんお得意のレンコン餅。「西湖」の名で百貨店などで売られていますね。レンコンのでんぷんがプルプルで、和三盆が穏やかに甘く、昔から好きです。

食事の間、楽しませてくれたのがさりげなく活けられた緑。従業員さんが森から摘んできて、生けるそうです。これも森の恵み。都会の花屋さんには売っていない美しさ。このまま東京に持って帰りたい思いでした。

人間は自然を破壊して、森を無くし続けています。でもこのように、志と実行力があれば、森をつくることもできます。一企業が工業団地の中に、工場だけを手広く建設するのではなく、森も文化も美味しさも創り上げた。その見本事例を見た思いでした。企業人たちよ、和久傳に続け!と叫びたくなります。

AIやメタバースなんて言いますが、この甘い緑の香りを深呼吸して、ゆったりと会話する贅沢は生身の人間だから体験できるものでしょう。ITはこういう時間を過ごすために活用すればいい、その手段だと思います。自由に見学できる、森の中の「食品工房」ここで作られるものものは、安心できて、美味しいに決まっています。