本物のコンビニ

お仕事で

私たちはほしいものが揃っている、便利なコンビニに慣れていますが、品ぞろえの基準は都会暮らし。田舎は田舎ならではのほしいものがあるはず、と、ぼんやり思うことがあったのですが、これぞ田舎の本物コンビニというお店に出会いました。麻紐、金属バケツ、竹製農具、赤飯用食紅、焼きミョウバンなど。品物を眺めていると、この土地の暮らしも伝わります。群馬県富岡市で。

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富岡市の額部(ぬかべ)というところ。ここの公民館でワークショップをした際に、参加者のお一人が「長年雑貨屋をやってるけどーー」という発言があり、地元のお店を訪ねるのが好きな私としては「帰りに寄らせてください」とお願いしたのでした。

しかし、雑貨屋?らしきものがない。もしかして・・と、通り過ぎたコンビニが、その方のお店でした。入るなり、トイレをお借りしたのですが、いきなり「福沢諭吉訓」が飾ってある。「ここは普通のコンビニじゃないわ!」と驚きました。

お店はこんな感じ。ね、違うでしょう?

「いま、なかなかこんなもの並べてる店はないよ」と店主。そうですね、荒縄、熊手や竹ぼうき、菅笠などが目立ちます。

「だってみんなこのあたりじゃ使うものだもの~、置かないわけにはいかないよ」「この麻ひもは何に?」「神様のことやるときにはこれが必要なの」「この勝糸というのは?」「これもいろいろ使う」

「このザルは?」「箕(み)って言って、豆やなんかこうあおって、ゴミを飛ばす。今プラスチックでできてるのは多いけど、これはちゃんと竹で出来てるよ。近くの人が作った貴重品だ」

「食紅だって、赤飯用とショウガ漬け用とは違うよ」

「どれを見ても使い方わかんないだろ?」「う~~~~む」私は唸るしかありません。

ジョウゲン??とはな何なのだろう。どうもホルモンを焼いて食べる習慣もあるらしい。

 

あれ~?陳列棚の下の方に、ポテツチップスのお取り置きがありました。障がいのある方のお気に入りのモノなのだそうです。「なくなるといけないからね~」

もちろん普通のコンビニにある品物群もあるのですが、半分くらいは田舎の雑貨屋さん。以前は純粋に雑貨店だったのでこういう形になったのだそうです。

ここにいて、品物の使い方の詳しい説明をうかがっていると、なんだか気持ちがほっこりしてきます。富岡市額部の暮らしをこのお店から知ることができます。お赤飯を炊いてみたい、沢庵も漬けてみたい、竹ぼうきで落ち葉を掃いてみたい、そんな気持ちも膨らんできます。

住んでいる人に寄り添う、本物のコンビニの姿を見た思いでした。