96歳で

小川ゆきよさんという方の写真展「笑顔」をみました。実際に笑顔の人物写真は少なく、抽象的な作品も。視点がしなやかで瑞々しく、96歳という年齢を感じさせません。お知り合いに作品の説明をされている小柄なご本人の姿は、凛々しくもあります。きっ ...
都会の祭り

車の音に交じってお囃子の音が、新宿区四谷のビル街を山車が練り歩きます。家々やファストフードの店にも提灯が下がり、ここ数日、街の表情が変わりました。コロナ禍で久しぶりのお祭りです。何よりも、浴衣姿の子ども達がウキウキしている。とはいえ、 ...
母と姉

実家の母と姉の体調が思わしくありません。「一週間の間に2人が余命を宣告されるなんて珍しいよね」と笑う母。「もう着れないから、この服あげるね」と姉。入院せずに在宅を選び、2人とも妙に落ち着いています。私にできることは、料理を作りに行って ...
街のメッセージ

コロナのおかげで、近場の散歩が習慣になっています。丁寧に歩くと、街にはいろいろなメッセージがあることがわかります。「経験力 やります!」と貼り出されている鯛焼き屋さん、「心美しければ顔それに従う」と筆文字のお寺。「在庫処分半セール額」 ...
母の生家が消えた

数か月ぶりに千葉の実家に行くと、母の生家の古い家が消え、更地になっていました。住んでいたが母の甥が亡くなったため、その息子さんが処分したのです。近くに住む母は、自分が生まれ育った家が壊される様子を毎日見ていたのでしょう。「しょうがない ...
福寿観音

横浜市東戸塚を訪ねました。駅を降りると、大規模店と高層マンションがそびえています。圧倒されながらマンションの間を歩いていくと、意外に緑が豊か。開発と同時に自然に気遣ってきたのでしょう。驚いたのは旧東海道が狭い道幅ながら残り、道路を見下 ...
食べなかった恵方巻

10数年前からか、関東でも急に広がった「恵方巻」。もともと習慣にあった西のかたには当たり前でしょうが、関東人の私の幼少時には記憶にない風習です。あるコンビニが仕掛けた流行などと聞くと嫌になり、高級太巻など見ると一言いいたくなる。で、今 ...
「つらいよ」

『男はつらいよ』『家族はつらいよ』山田洋次・作の映画を、週末のテレビ放送で見ました。寅さんはもちろん、リリーもタコ社長もつらい。「家族」の方でも高齢者はつらい、嫁もつらい。大笑いしながらも「つらい」って言うの、いいなあと思いました。「 ...
コロナで得たもの

負け惜しみではないですが、コロナ禍でなければこうならなかったという良いこともあります。近所の散歩に目覚めた。夫の料理のレパートリーが増えた。洋服や化粧品を買わなくなった。スーパー滞在が短時間に。手洗いウガイの徹底で風邪を引かなくなった ...
デンちゃん

『虫愛ずる姫君』ではありませんが、訳あってカタツムリを飼い始めました。名前は「デンちゃん」、霧吹きと飼育箱ごといただき、そのまま事務所に置いています。人間は勝手なもので、覗いたときに動いていないとつまらない。では動かないかというと、結 ...
ゆる〜い魚売り

よく行くスーパーの鮮魚コーナーの、女性の売り子さんが気に入っています。魚屋なら「ヘイ!いらっしゃい。何にする」と、勢いよく迫られることが多いのですが、彼女はゆるい。「今日の〜、おすすめは〜イワシで〜す。いかがでしょうか〜〜」と、ソフト ...
よーいドン

2週間前、うちにいると「位置について、よーい、ドン!」という、聞いたこちらも身構えてしまうほどの、女性の大きな掛け声がしました。ドン、の後はスタスタスタと道をかける音。その後、夫が現場を目撃、母と小5くらい男の子が、我が家横の細い一本 ...
残念な生き物?

中村桂子さんのお話をうかがってから「みんな同じ生き物」という視点を大切にしています。そういう時に「ざんねんないきもの展」を見ました。青い舌を出して威嚇するも効き目の無いトカゲ、ノドに肛門のあるデンキウナギ、歯が全部奥歯のウツボなど。何 ...
9.11

あの日、私は滋賀県守山市で商店街活性化のワークショップをしていました。皆さんとのお疲れ様会で居酒屋に入ると、賑やかなはずの店が静まり返り、誰もがテレビを見ています。「どしたの?」と言ったきり、私もくぎ付けになりました。この夜は興奮し「 ...
戦争のかけら

知人が「戦争の直接体験がなくとも、後に生まれた者でも、何かしらを語り継ぐべきだ」とSNSに書いていました。そこで私が思い出したのが「傷痍軍人」の姿です。デパートの入り口で白装束で物乞いをしていました。一方、私の父のギターケースに「大雨 ...
スズメはお仲間

コロナ禍で家の時間が多くなり、いまや外に出るのが恐怖の段階。そうなると窓辺の様子に活路を見出します。昨年の春から、我が家にはスズメのご飯台ができました。自由気ままなこの小さな鳥に、喜んだり、話しかけたり。親子スズメは、親が子に餌のパン ...
五輪が開会して

炎天下、ブルーインパルスを見上げた日は、夜中までヘリコプターの音が響いていました。翌日、人手の様子を撮影する夫のお供で国立競技場に行くと、本当に混んでいます。みんな汗だくマスクで、2020と描かれた建物や大きな五輪オブジェで記念写真。 ...
「ひっちゃけた」

出張先の雲仙市で、この言葉を聞きました。高いところから「落ちた」という意味だそうです。こうした土地ならではの表現に出会うと嬉しくて、そこから話題が広がります。小さな日本ですが、多様な方言があるから面白い。共通語なんて実に窮屈、いまや誰 ...
時間が止まったまま

みんなの話題は、今や「ワクチン終わった?」「無観客?」です。東日本大震災の復興五輪なんてテーマは、どこかに消えました。そんな中で開催の「止まったままの時計-フクシマ10年-」写真展。写真家の夫と、その生徒さんの共同制作です。原発事故で ...
母が転んだ

姉夫婦と同居している96歳の母です。昔と違って、ラインでその様子が随時わかります。先日姉から連絡、「おばあちゃんが仰向けにひっくり返って起き上がれない」。とはいえ、姉も今、闘病中、母を起こす力がありません。結局、孫やひ孫が連携して、母 ...
コースを変えると

遠出はできませんが、散歩や日常の買い物には行きます。私は車を持たないので、もっぱら歩きます。いつもの道でなく違う道を行くと、いろいろな発見があります。面白い看板、綺麗なコケ、高層ビル下のお稲荷さん、「釣り地蔵」という名のお地蔵さん、「 ...
芽や根の力

オフェイスの緑化が進んでいます。緑があるのはいいですが、でも、業者任せで入れ替えられる緑には愛着が湧きません。生きる、伸びる、芽も根も感じないのでは、緑は壁や柱と一緒のただのハードでしょう。あ、芽が出てきた。水は足りてるかな。根詰まり ...
父の教え

私が高校一年のとき、父から真顔で「智子、和服で一人で、店でお酒を飲める女になりなさい」と言われました。その後、家出を図った私は、ずいぶん親不孝を重ねてきましたが、この教えだけ守りました。最近は着物は着ませんし、店にも入れない状況ですが ...
病院の待合室

都市の大病院の待合室、長い長い待ち時間に、いろいろな人をみます。仲の良さそうな老夫婦、イライラしているお爺さん、香水ムンムンのご婦人、秘書を連れた偉そうな人、宙を見て悩んでいる感じのお嬢さん。普段出会わないいろいろな人を見て、さまざま ...
花咲かおばさん

以前、私は近くの歩道の花壇を、勝手に世話をしていたことがあります。今はそんな場所もなく残念なのですが、どうも同好の士がいるらしく、ここ数年、少し離れた歩道の三角スペースに黄花コスモスの苗を誰かが植えています。最近も草が抜かれて綺麗に。 ...
スローライフ旬

仲間と「旬」について考えています。魚類,野菜,果実などの最も美味な時期と定義しても、農業技術の進歩、気候変動などで本来の旬は消えています。食材カレンダーというのを見ると、1カ月から長くて8カ月間が旬というものもある。旬という字を掲げた ...
カメ太とカメ吉

ご近所でカメを飼うお家が2軒。高齢のおじ様が散歩させているのはカメ太、小学生の男の子のお友達はカメ吉です。コロナ禍でペットが人気だそうですが、庭が要らず、鳴かない、都会のペットとなるとカメあたりなのでしょうか。地縁というほどでもない、 ...
オンライン蜜蝋ラップ作り

奈良県十津川村に行けない日々、zoomでワークショップを取材しました。温泉旅館でのものづくり体験は、布に蜜蝋をしみ込ませて作る、今ブームの「蜜蝋ラップ」です。窓からの緑、分厚い木のテーブル、楽しいおしゃべりとともに何かが出来上がるうれ ...
zoom交流

ようやくzoomというものを少し覚えました。結構おもしろい場面があります。先日の「さろん」で、地方の旧家から参加の方の後ろにみえた古いガラス引き戸に参加者から絶賛の声が上がりました。パソコンの前に産物の果物を積み上
げて参加の ...
「最後の湯田マタギ」写真展を見て

豪雪地帯、岩手県西和賀郡湯田町で熊を獲るマタギたち。その狩猟と暮らしを撮った黒田勝雄さんの写真展を見ました。撮影は40年前、けれどもいま眠りから覚めたような新鮮さです。マタギの姿は貴重ですが、当時の日常の写真が心に染みます。山菜取り、 ...